ムンバイで聞いた昔の日本の話

10年一昔といいますが、ムンバイであるインド人にちょっと前の日本についてのこんなエピソードを聞きました。

10年ほど前に私(ムンバイのタクシー運転手)の親戚の人が東京に旅行に行って、ホテルからタクシーに乗ったのだが、タクシーの中に財布を忘れてしまった。財布の中には多額の現金だけでなく、航空券、カード類等大切なものがすべて入っていた。気がついてあわててホテルに連絡したところ、「恐らく無事に戻ってくるでしょう」と冗談を言っているとしか思えない対応であった。しかしその日の夕方、本当にそのタクシー運転手がわざわざそのホテルまで届けてくれた。本当に驚いて、タクシー運転手にお礼の気持ちを渡そうとすると、その運転手はどうしても受け取らなかった。再び驚くとともに大変感銘を受けた、というお話しです。

さらに25年ほど前には、ムンバイのある有名な作家が日本を旅行している間、ある駅のトイレで腕時計を置き忘れてしまった。気がついたときはもう遅いと思ったが、一応駅員に相談すると、「どこのトイレに忘れたのですか?一応一緒に行って見てみましょう」と言うので、”自分がトイレから出て相当時間が経っているので、何人も出入りしたに違いない。あるわけがない”と駅員の対応を冗談というか、まじめに取り合ってくれていない、と思った。しかし実際に行ってみると、そこには置き忘れた腕時計がそのまま置いてあるではないか!!大変驚き、後日この顛末を新聞に投稿したとのことです。

先の運転手は、その作家の文章を見たときには、その話を信じられなかったと言います。しかし、自分の親戚が日本で体験した話を聞いてからは信じるようになったとのこと。インド人にしてみれば、いやほとんどの外国人にとっては奇跡でしょう。私(筆者)はその運転手に、「昔の日本は家の鍵をかけないで外出してもまず何も起きなかったよ。でも今はそうは行かないけど、忘れ物が手付かずでそのまま戻ってくるのは今でも珍しいことでは無いと思う。特にその持ち主が外国人だったら特にね」と言ったのですが、そうしたら「日本には貧しい人が居ないからだろうか?」というので、「日本にも貧しい人はたくさんいますよ。食べるのに困っている人はまずいないとは思うけど」 でもこれはそういう問題でしょうか?”衣食足りて礼節を知る”とは確かにそうなんですが、これは日本の文化とお呼ぶべきものではないかと思います。教育、家庭のしつけ、伝統、愛国心など様々な要素が絡み合っての結果と思えます。

今では状況は変わって、上記のような話しは、昔話と言われるのかもしれませんが、まだまだ世界標準からすると極めて高い民度、道徳性を保っていると思います。このインド人の話は、日本人として聞いていて誇らしいものでしたが、昔話には決してしたくはない、日本の宝物として守ってゆきたいものの一つだと思います。

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